「壁の傷や汚れは借主の責任?それとも経年劣化でオーナー持ち?」
賃貸物件の退去時、もっとも揉めやすいのが「原状回復費用の負担区分」です。
オーナーと借主、どこまでが誰の責任なのか。そして、「故意・過失」の判断とはどうされるのか。
本記事では、原状回復における責任の分かれ目と判断基準を、初心者にもわかりやすく解説します。
原状回復における「負担の基本ルール」
原状回復の費用負担には、明確な原則があります。
基本的に、以下のように分かれます。
状態や損耗の内容 | 負担者 |
---|---|
経年劣化・通常損耗 | オーナー |
借主の故意・過失による損傷 | 借主 |
契約で明示された特約 | 契約に従う |
つまり、普通に生活してできた傷や汚れは借主の責任ではないということです。
たとえば以下は「通常損耗」とされる代表例です。
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家具の跡(カーペットや床の凹み)
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日焼けによる壁紙の変色
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エアコンのフィルターの埃
借主の責任とされる「故意・過失」の例
「うっかり落として傷つけた」
「掃除を怠ってカビが発生した」
このようなケースは“過失”とされ、借主負担となる可能性が高くなります。
✅ 借主負担と判断されやすい具体例
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壁にポスターをテープで貼って剥がれた跡
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タバコによるヤニ汚れ
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ペットによる床の傷や臭い
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鍵を紛失して交換になったケース
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清掃せず水回りにカビやサビが発生した
これらは「通常の注意義務を怠った」とみなされ、借主の責任になることが多いです。
経年劣化との見分け方
たとえば「壁紙の黄ばみ」は、タバコによる汚れなのか、それとも時間による変色なのか。
これは判別が難しく、しばしばトラブルになります。
国土交通省のガイドラインでは、クロスの耐用年数を6年としています。
つまり6年以上経っていれば、原則として借主に全額請求することは難しいとされています。
特約がある場合の優先度
契約書に「退去時は壁紙全張替え費用を借主が負担」などと書かれていることがあります。
このような特約がある場合でも、「一方的・不合理」と判断されれば無効になることがあります。
特に以下のような条項は要注意です。
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通常損耗にまで借主負担を強いる
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内容が不明確なもの(例:「一式負担」など)
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国交省ガイドラインと明らかに矛盾する記載
借主が不利益を受けすぎる内容は、消費者契約法によって無効とされる可能性もあります。
原状回復でトラブルにならないために
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入居時と退去時の写真記録をしっかり取る
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ガイドラインや契約書を事前に読み込む
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不明点や納得できない請求は、交渉・再見積もりを依頼する
責任の境界線が曖昧な場合は、まずは冷静に、根拠と証拠を持って話すことが大切です。
まとめ
原状回復における責任問題は、**「誰の行為が原因か」「通常の使用範囲か」**によって分かれます。
経年劣化や通常損耗はオーナーの負担。故意・過失による汚損は借主の負担。
最終的な判断には、「契約書」「ガイドライン」「現状証拠」がすべて重要です。
トラブルを防ぐためにも、知識と準備をしっかり整えておきましょう。
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