通常の原状回復とは一線を画す、「特殊ケース」があります。
たとえばゴミ屋敷化した室内、孤独死が発生した物件、あるいは著しく老朽化した建物。
これらは原状回復費用だけでなく、法律・心理的ハードル・近隣対応まで絡む難しい問題です。
本記事では、こうした特殊ケースにおける対応方法と負担区分、トラブル回避のコツを解説します。
ゴミ屋敷化した物件の原状回復
原状回復の前に「特殊清掃」が必要
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腐敗物・害虫・悪臭・汚物などが放置されている場合、まずは専門業者による除去・清掃が必要です。
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原状回復費用とは別に、清掃費用数万〜数十万円単位の負担が発生することがあります。
費用負担は誰?
原則として借主の責任となります。
「著しい不衛生状態」は、通常使用の範囲を超えるため、故意または重過失とみなされるケースが多いです。
判例例:ゴミ屋敷による高額請求が認められた例あり
ゴミ放置によって床の腐食や虫害が生じたケースでは、借主が清掃+補修費用を全額負担とされました。
孤独死が発生した場合の原状回復
発見の遅れ=原状回復の難易度が上がる
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孤独死後、発見までに時間がかかると体液による床・クロス汚染、悪臭の染みつきが発生。
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特殊清掃・オゾン脱臭・床材や壁紙の全面張替えが必要になる場合があります。
原則はオーナー負担。ただし例外も
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借主の死亡は不可抗力のため、原状回復費用はオーナーが負担するのが原則。
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ただし、生活保護者や保証会社との契約状況によっては一部補填されるケースあり。
火災保険や家財保険で補償される場合も
孤独死に対応する特約付き保険(例:孤独死保険、家財保険特約)を借主が加入していた場合、原状回復費用が保険でカバーされることがあります。
老朽化した建物の原状回復
老朽化とは、建物の構造自体が経年劣化しており、原状回復しても元通りにできない状態を指します。
オーナーの責任になるケースが多い
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経年劣化や建物全体の老朽による損耗は、原則としてオーナー負担。
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たとえば、ひび割れた外壁、腐食した床材、雨漏りなどがある場合は、借主が補修費を負担する必要はありません。
特殊ケースでもトラブルを防ぐために
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事前に「原状回復ガイドライン」に照らし合わせて判断
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契約時に孤独死・特殊清掃・保険対応の特約を明記
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入退去時の写真・動画・立会い記録を残す
まとめ
ゴミ屋敷、孤独死、老朽化といった特殊ケースでは、通常の原状回復とは別次元の対応が求められます。
責任の所在もケースによって大きく変わるため、判例・ガイドライン・保険・契約内容をしっかり確認することが大切です。
トラブルにならないためには、「想定外の事態にも備えた契約と対応」がカギになります。
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