はじめに|「法人化すれば何でも経費にできる」は誤解です
アパート経営が軌道に乗ってくると、法人化を検討する大家さんが増えてきます。
「節税になる」「経費が増やせる」といった話を聞いて興味を持つ一方で、実際にどう経費処理が変わるのかはあまり知られていません。
この記事では、**個人と法人で異なる経費の取り扱い、法人化で可能になる経費の拡大、そして注意すべき“落とし穴”**について分かりやすく解説します。
1. 法人化すると経費の範囲が広がるのは本当?
✅ 基本的には「業務に関連すれば経費にできる」点は同じ
個人でも法人でも、家賃収入を得るための支出であれば経費化は可能です。
ただし、法人の方が「事業活動」として認められやすく、処理範囲の自由度が高い傾向があります。
✅ 法人で経費にしやすくなるものの例
経費項目 | 解説 |
---|---|
代表者への役員報酬 | 法人の損金になる(個人は給与所得として申告) |
社会保険料 | 法人負担分は経費処理可能 |
出張費・交通費 | 出張報告書などの証拠があれば処理しやすい |
接待交際費 | 中小法人は800万円まで損金算入可能(制限あり) |
事務所家賃・水道光熱費 | オフィス設置で全額経費処理可(個人は按分が必要) |
2. 個人と法人の経費処理の違いまとめ
項目 | 個人 | 法人 |
---|---|---|
給与 | 専従者給与のみ経費可(条件あり) | 役員報酬は損金にできる |
家族への支払い | 要届出・金額制限あり | 規定と実態があれば支払可能 |
按分処理 | 携帯・車・家賃などで必要 | 法人名義なら全額経費化しやすい |
接待交際費 | 私的用途と混同しやすい | 法人の方が経費処理しやすいが制限あり |
減価償却 | 同様だが処理方法が簡素 | 複数物件・資産登録に強い |
🟢 法人=何でも経費にできるわけではなく、あくまで「証拠と規定」が必要です。
3. 法人化での節税メリットは「経費拡大」+「所得分散」
✅ 役員報酬で所得分散 → 家族へ給与支払いも可能
→ 所得を分けることで個人の高い税率を回避
✅ 経費の拡大 → 会議費・福利厚生費・法人携帯などもOK
→ 実態があれば、グレーではなく“制度に則った節税”
✅ 法人税の方が安定
→ 所得税は最高45%/法人税は約23.2%(利益800万円超は34%)
4. 法人化による経費の“落とし穴”と注意点
❗ ① 記帳・申告が複雑になる
→ 決算書作成・法人税申告には税理士がほぼ必須=コスト増加
❗ ② 社会保険強制加入の可能性
→ 役員報酬が発生する場合、健康保険・厚生年金への加入義務あり(毎月2〜5万円の固定コスト)
❗ ③ 名義の変更・口座管理が煩雑になる
→ 銀行口座、火災保険、登記などを法人名義に変更し、資金の流れを明確に区分する必要あり
❗ ④ “経費にできる”=“得”とは限らない
→ 無理に支出を増やすとキャッシュが減って経営を圧迫
→ 経費を増やすより利益と現金を残す経営が大事
まとめ|法人化=節税万能ではない。目的とコストを見極めて
アパート経営における法人化は、
✅ 経費処理の自由度が増す
✅ 所得分散と法人税による節税が可能
というメリットがあります。
ただし、
❗ 申告業務・社会保険・運営コストなど**「法人ならではの負担」もあるため、
しっかり試算と準備を行った上で、「節税よりも経営効率」を意識して判断することが重要**です。
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