はじめに|「減価償却ってなに?」「デットクロスって怖い…」というあなたへ
アパート経営をしていると必ず出てくるワード、「減価償却」と「デットクロス」。
特に初めて物件を購入する方にとっては、「聞いたことはあるけど、よく分からない…」という人も多いのではないでしょうか?
しかし、減価償却を正しく理解すれば、節税とキャッシュフローの安定に役立つ超重要知識になります。
この記事では、初心者にもわかりやすく、減価償却の基礎・計算方法・注意点、そしてデットクロス対策までを丁寧に解説します。
1. 減価償却とは?|建物価値の“経年劣化”を費用にできる仕組み
▶ 減価償却とは
購入したアパートの建物部分の価値を、耐用年数に応じて毎年少しずつ経費として計上できる制度です。
土地は価値が減らないので償却不可ですが、建物は年数とともに価値が下がるため、経費化が認められています。
2. 減価償却の計算方法
▶ ステップ1|建物価格を把握する
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売買契約書に土地・建物の按分記載がある場合はそれに従う
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記載がない場合、固定資産税評価額や路線価で按分を行う
▶ ステップ2|耐用年数を調べる
構造 | 耐用年数(法定) |
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木造 | 22年 |
軽量鉄骨(厚3mm以下) | 19年 |
重量鉄骨 | 34年 |
RC(鉄筋コンクリート) | 47年 |
※中古物件の場合、残存耐用年数を再計算する場合があります(「簡便法」で耐用年数の20%を使用)。
▶ ステップ3|定額法で毎年の償却費を算出
例:木造アパート1,200万円、耐用年数22年 → 年間約54.5万円の経費
🟢 この金額は実際にお金が出ていなくても経費計上できる=節税効果が高いのがポイントです。
3. デットクロスとは?|減価償却が終わった後の“見えない赤字”
▶ デットクロスの仕組み
減価償却が終わると、帳簿上の経費が減少して利益が出たように見える。
しかしローンの元本返済は経費にならないため、
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税金は増える(所得が増えた扱い)
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でも実際の手元キャッシュは増えていない
という「お金は増えないのに税金だけ増える現象」が発生。これがデットクロスです。
✅ デットクロスになると起こること
項目 | 影響 |
---|---|
税金 | 所得税・住民税が大きく増える |
キャッシュフロー | 手残りが激減(下手すると赤字に) |
融資評価 | キャッシュフロー悪化で融資が出にくくなる |
4. デットクロスを防ぐ3つの対策
対策①:減価償却が切れる時期を事前に把握しておく
→ 何年後に利益計上が跳ね上がるかを、あらかじめ可視化しておく
対策②:複数物件で“償却バランス”を分散
→ 減価償却が終わる前に次の物件を取得し、償却費の波を平準化
対策③:売却も含めた出口戦略を設計
→ デットクロスに突入する直前で売却して利益確定→新たな物件へ切り替えも選択肢
5. 減価償却のメリットと注意点まとめ
メリット | 注意点 |
---|---|
節税できる(現金は出ていないのに経費計上) | 減価償却が切れた後のデットクロス |
赤字でも損失繰越ができる(青色申告) | 売却時に帳簿価格と実売価格の差で課税されやすくなる |
投資回収までの計画が立てやすい | 減価償却に頼りすぎた経営は脆い |
まとめ|減価償却は「節税の味方」でも「時間差の落とし穴」でもある
減価償却は、アパート経営で最も大きな節税メリットの1つです。
しかしその裏には、将来の税負担が大きくなる可能性=デットクロスという落とし穴も潜んでいます。
だからこそ、
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節税目的だけで物件を選ばず
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長期的な収支シミュレーションを行い
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「いつ、何が起きるか」を予測して備える
そんな戦略的な不動産経営を目指しましょう。
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