はじめに|「相続税が心配だから、生きているうちに渡しておきたい」
親が所有するアパートを「元気なうちに子どもに贈与しておきたい」「相続税対策として生前贈与が良いと聞いた」──そんな相談が増えています。
たしかに、生前贈与は相続前に財産を分けておくことで、相続税を抑える有力な手段です。
しかし、やり方を間違えると、贈与税が高額になったり、逆に不利になる可能性もあります。
この記事では、アパート経営における生前贈与の仕組み、節税メリット、注意点、具体的な進め方をわかりやすく解説します。
1. 生前贈与とは?相続との違いを整理しよう
▶ 生前贈与とは
贈与者が生きているうちに自分の財産を他人(主に子ども)に渡すこと。
贈与税の課税対象になります。
▶ 相続との違い
項目 | 生前贈与 | 相続 |
---|---|---|
タイミング | 生きているうち | 死亡後 |
課税 | 贈与税 | 相続税 |
主体的な意思 | 自由に決定可能 | 遺産分割協議が必要 |
コントロール | 一人に集中させることも可能 | 法定相続分の制約あり |
2. アパートを生前贈与するメリット
✅ メリット①:将来の相続税を圧縮できる
アパートを早めに贈与すれば、その分の評価額が相続財産から除外されるため、相続税の課税対象額を減らす効果があります。
✅ メリット②:収益移転による課税回避(所得分散)
家賃収入を親が受け取っていれば所得税は高くなるが、子どもに贈与して家賃収入を移すことで、低い税率で課税されるケースも。
✅ メリット③:家族間の“争族”を未然に防げる
「誰が継ぐか」「どう分けるか」などのトラブルが起きる前に、早めに分配方針を決めておくことで相続トラブルを回避できます。
3. 生前贈与の注意点|安易に贈与すると損することも
❌ 贈与税が重くなる可能性
アパートの評価額が大きいと、贈与税率が最大55%になることもあります。
🟢 対策:年間110万円の非課税枠を毎年コツコツ贈与(暦年贈与)
※ ただし、2024年以降は「相続時精算課税制度」との併用・選択が重要に
❌ 不動産取得税・登録免許税が発生する
相続とは異なり、贈与による不動産移転には**登記時の登録免許税(固定資産税評価額×2%)や不動産取得税(3〜4%)**がかかります。
❌ ローン付きのアパートは贈与が困難
ローン残債がある場合、金融機関の同意が必要。また、ローンの贈与は贈与税の対象にもなり得ます。
4. アパートの生前贈与を成功させるための3つのステップ
✅ ステップ①:財産評価と贈与税シミュレーションを行う
→ 固定資産税評価額・収益性・土地評価(路線価)などをもとに、税理士に依頼して試算
✅ ステップ②:最適な贈与制度を選ぶ
制度 | 特徴 |
---|---|
暦年贈与 | 年間110万円まで非課税/コツコツ型 |
相続時精算課税制度 | 一括で2,500万円まで非課税/相続時に精算される |
🟢 税制改正が続いているため、2024年以降の選択は慎重に
✅ ステップ③:名義変更登記と贈与契約書を整備
→ 法務局への申請に加え、贈与契約書の作成・保存も税務対策として重要
5. 法人化との併用も検討すべき選択肢
アパートの生前贈与では、**「法人へ移転して株式で贈与」**する方法もあります。
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不動産取得税などがかからない
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管理・修繕の意思決定がスムーズ
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所得を法人で受け、家族に役員報酬で分散
ただし、設立・維持コストや法人税の知識が必要なため、専門家との事前相談が必須です。
まとめ|生前贈与は「節税+家族への想い」を形にする行動
アパートを生前贈与することは、
単なる節税ではなく、資産と経営を計画的に受け継いでもらうための第一歩です。
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贈与税の試算と制度の選択
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不動産移転に関わるコストの理解
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家族と“継承する覚悟”を共有すること
これらをバランスよく整えることで、失敗のない円滑な贈与と、将来の相続トラブル回避につながります。
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